槍ヶ岳登頂表銀座縦走ツアー
燕岳から槍ヶ岳への縦走路は「アルプス銀座」と言われ、どんどん近づいてくる槍ヶ岳を見ながら歩くことが出来るとても素晴らしいコースです。そのコースを紅葉の美しくなるこの時期に歩く燕山荘スタッフガイドによるオリジナルツアーを燕山荘では毎年行っています。今年も9月24日~27日に開催し、燕山荘グループの山小屋(燕山荘、大天荘、ヒュッテ大槍)にご宿泊いただきながら秋晴れの山歩きをお楽しみいただきました。
大天井岳へ向けて出発前に 集合場所の燕山荘玄関前で燕岳をバックに
集合場所は燕山荘です。このツアーには、燕山荘までコースタイム内に歩ける体力も必要となります。
今回のツアーは3日間とも秋の晴天に恵まれ、最高の山歩きを楽しむことが出来ました。槍ヶ岳はまだ遠く小さく見え、本当にあんなところまで行けるのかと少し心配される方もいらっしゃいましたが、美しい秋空がそんな心配も忘れさせてくれ、楽しい雰囲気で歩き出すことが出来ました。
途中、普段あまり目にすることのない「キクイタダキ」のヒナに出会いました。
今年の紅葉は暖かな日が続いているため、例年より少し遅れていますがそれでもダケカンバやカラマツが黄色くなっていて、美しい光景を見ることが出来ます。
初日は大天荘に到着後、東天井岳まで向かいました。
その手前にはかつての小屋の跡の石室が残っています。これは喜作新道が出来る以前、燕岳から槍ヶ岳へ向かうルートが大天井岳→東天井岳→二ノ俣→槍沢となっていた名残です。そんな先人たちのことを考えながらこのコースを歩きました。
オヤマソバ
大天井岳周辺には紅くなったオヤマソバをあちこちに見ることが出来ました。燕岳周辺ではあまり目にしません。燕岳から少し離れただけ、植物の様子も変わっています。こんな変化を感じるのも縦走の楽しみの一つです。
大天荘食堂 支配人榊が作る山形名物芋煮を自らサービス
夜はこの時期限定・大天荘名物のイモ煮を楽しませてもらいました。寒くなるこれからの季節、体も心も温まります。
翌朝は日の出前の5時15分に大天荘を出発。
大天荘から槍ヶ岳頂上までの1日の長いコースのことを考えると早出は大切になってきます。
出発時の気温は4℃くらいと寒かったのですが、陽が当たりだすと暖かくなってきます。紅葉のトンネルの中を気持ちよく歩いていきます。
大天井岳から下って、一旦見えなくなっていた槍ヶ岳は大天井ヒュッテを過ぎると再びぐっと近づいて見えてきます。
大天井岳から西岳までの道は真近に槍ヶ岳を見ながら歩くことが出来て、このコースの中で最も気分よく歩くことが出来ます。
東鎌尾根がやがて近づいてきます。今年はナナカマドの赤がやや少ないように感じますが、黄色くなった山肌はやはりきれいです。その一方、近づく槍ヶ岳の姿に緊張感も高まってきます。
東鎌尾根に入ると切り立った岩やハシゴも出てくるので、西岳から先はストックは使いません。また、ヘルメットもかぶって歩きます。
槍ヶ岳とヒュッテ大槍をバックに
大天荘を出発して、約8時間でヒュッテ大槍に到着しました。
ヒュッテ大槍に不要な荷物を預けて、槍ヶ岳へ向けて出発です。日中は陽ざしが強く、気温は高くなくても暑くなりました。ヒュッテ大槍で水分補給をされる方も多くいらっしゃいました。
山での水分補給はとても大切です。水分不足により、体調を崩される方はこの時期でも少なくありません。これからの季節は寒くなり、水分補給を忘れがちですが、意識して水分補給を心掛けることは大切です。
オダマキ
イワベンケイ
燕岳周辺では見られない花です。毎年、このツアーでこれらの花を見つけるのが楽しみのひとつです。
あこがれの槍ヶ岳に登頂です。皆さん、本当にうれしそうでした。遠くには小さくなった燕山荘も見えて、よくこんなに遠くまで歩いて来たなと喜んでいらっしゃいました。縦走の素晴らしさはやはり、この達成感なんでしょうね。
26日は12時間行動の長い一日でしたが、皆さんとても元気で最後まで笑いが絶えませんでした。
ヒュッテ大槍食堂
夕食はみんな一緒に槍ヶ岳に登頂出来たことを祝ってワインで乾杯です。その日の夜はとてもきれいな星空が広がり、寒さを忘れて、写真を撮ったりしながら満天の星を楽しみました。
槍ヶ岳登頂日、燕山荘グループヒュッテ大槍にて
左から 燕山荘代表赤沼 ヒュッテ大槍支配人井村 燕山荘支配人河地 大天荘支配人榊 燕山荘厨房主任横山
燕山荘周辺の紅葉の様子
今年はいつもより暖かい秋となっていて、燕山荘では初氷もまだみられず紅葉の進み具合も遅いです。こうしたことから地球の温暖化を感じざるを得ません。また、二つの台風のの影響で海水の混じった雨が降り、葉が枯れてしまった木々も見られますが、それでも毎年違う紅葉はその年なりの美しさがあります。
最高の秋晴れに恵まれ、我々スタッフも一緒に楽しい山歩きが出来ました。
ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。
ガイド:河地清人、榊寛昭、横山誠一
写真・文 河地清人