心あらば
本日の朝は、遠く離れた八ヶ岳連峰が雲海の向こうに浮かぶほどの雲に満たされた景色となりました。
槍穂高稜線の斜面は夏らしい緑から変化し、徐々に鮮やか色彩になってきています。
しかし、この美しい紅葉も台風や前線の通過により、途端に葉を散らしてしまうことがあります。
平安時代に詠まれた和歌に以下のような秋の歌があります。
「小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ」(拾遺和歌集)
貞心公(藤原忠平)によって詠まれた歌です。
この和歌は、宇多上皇が小倉山の美しい紅葉に感動し、息子である醍醐天皇にもこの紅葉を見せたいと言ったのを聞いて、
藤原忠平が醍醐天皇へ上皇の気持ちが届くようにと詠まれたそうです。
もし紅葉に心があるならば、天皇がおいでになるまでもう一度だけその美しさを失わないでほしい。
紅葉を人のように捉え、藤原忠平の心からの祈りが大変美しく感じます。
紅葉は一瞬だからこそ美しい。
ですが多くのお客様に槍ヶ岳へ続く道の紅葉を楽しんでいただきたい。
もし槍ヶ岳の紅葉に心があるならば、もうしばらくは美しくあることを願います。
長谷川