道を想う
秋の山らしい清澄な空気と美しい紅葉が、槍ヶ岳周辺を包み込んでいます。
中房温泉から燕岳を経由して槍ヶ岳を目指す表銀座縦走路からも、多くのお客様がお越しになられています。
この表銀座縦走路は別名「喜作新道」と呼ばれ、古くからの歴史ある道となります。
完成したのは大正9年(1920年)、猟師である小林喜作らによって開かれました。
それまで槍ヶ岳を目指すには、燕岳ー大天井岳ー常念岳と縦走し、一ノ俣谷を下って槍沢を登り返す4日の行程が普通であったそうです。
現代とは比較にならないほど、槍ヶ岳登山のハードルが高かったことが分かります。
開道から104年、今も多くの槍ヶ岳を目指す人々でにぎわう喜作新道。
この光景を小林喜作が見たらどのように感じるでしょうか。
小林喜作の尽力によって開かれた喜作新道は、時代を超えて多くの登山者の夢を叶える道となりました。
槍ヶ岳の雄大な姿を間近に望みながら歩む現代の登山者たちの姿を見れば、小林喜作も深い感慨を覚えることでしょう。
表銀座縦走路を歩く際には、槍ヶ岳黎明期に想いを馳せながら頂を目指すことも、楽しみ方のひとつになると思います。
かつての先人達の苦労や挑戦を想像しつつ歩を進める。
それにより、この道の歴史や価値を深く感じることができるかもしれません。
長谷川