「山や」の矜持はいづこに
昨日の夕方、警察からの出動要請により、東鎌尾根上に、道迷いで救助を求めている方のレスキューに出動しました。
しかし、この救助要請、どうにもおかしな事ばかりでした。
警察からの連絡によれば、大曲りから東鎌尾根上の水俣乗越に出た、この60代の男性本人からの携帯電話を使った連絡によると、「途中で会った登山者に教えてもらったショートカットの道に入って“進退”が窮まった。」と言うのですが、乗越から槍方面へのショートカットなんて聞いたこともないですし、進退が窮まると言えば沢を間違えて上がったと考えるのが普通なので、何度も、「当人は水俣乗越まで本当に上がって来たと言っているのですか?」と警察に確認するのですが、返ってくる答えは「イエス」。そして、第一報以降は、この男性とは連絡が取れないと言います・・・。
とにかく、水俣乗越までは、大声で名前を叫びながら、両側の沢筋を丹念に目視確認して進むものの、手掛かりはありません。
しかし、ちょうど水俣乗越に着いたタイミングで、警察から無線が入り、曰く「救助要請者は、自力で歩いて上高地方面に向かって下山中。」
「んん?????」
狐につままれた気分で大槍に戻ると、救助要請者と合流した隊員経由で、詳細な報告が届きました。
この(救助要請者である)60代の男性は、通常のルートである槍沢を、ごく普通に槍ヶ岳へ向かっていたのですが、大曲りを過ぎたあたりから現れたルート上の残雪を嫌がり、まったくルートでない沢筋を、自身の意思で尾根目指して登り始めたものの、これ以上登れない、“前進”が窮まったところで、救助要請の電話をしたようです。そして、ケガなどの一切ないこの方は、「なかなか救助が来ない」ので、「上高地方面に下山を開始した」のだそうです・・・・。
槍見河原で合流した、北アルプス夏山常駐隊(レスキュー隊)隊員に、こってりと絞られたのは、言うまでもないでしょう。