ペダルを漕いで
8月21日(日) 午前6時現在の気温:18℃ 天候:曇り
ご存知の方も多いと思いますが、有明荘に至る中房渓谷沿いの山道は細く急勾配の坂が延々と続きます。
そんな道をサイクリングウェアに身を包み、懸命にペダルを漕いで上がっていくチャリダー(自転車乗り)の方を時おり見かけます。
楽な方へ楽な方へと身を流しがちな私としては苦行以外に思えないながらも(失礼)、
「あともう少しでゴールですよ」と心の内で応援しています。
大変だろうによくやるなあと思いつつ、山に登らない知人から聞かれることに似ているなと気づきました。
「どうして山登りはあんなに大変そうなのに、(また)山に登るんですか」
というもの(質問)です。
あれこれ答えを考えながら、どうにもうまく答えられず、
「う~ん、ひとそれぞれだから、まあ一回山に登ってみればぁ」
あたりに答えは落ち着いてしまいます。
ならば、これは坂道チャリにも通ずるのではと思い立ちまして、休日を利用して安曇野にサイクリングに行ってきました。
中房渓谷(槍ヶ岳矢村線)に挑戦するのはあまりに無謀なので、穂高駅の観光情報センターの方に相談すると、満願寺(つつじ公園)あたりが、そこそこ大変なサイクリングロードになるんではなかろうかとのことで、そちらを目指すこととします。
こちらで借りた安曇野シェアサイクルは地域の17か所のサイクルポートで返却できるとのことなので、帰りは日帰り温泉施設の「しゃくなげの湯」で自転車を返せば、(有明荘へのバス停は「温泉公園北口」です)穂高駅まで戻って来なくても良いので助かります。自分の力のみで漕ぎたかったのですが、残念ながら(?)電動自転車しかないとのことで、走り出しました。内心ラッキーとも思っていたかもしれません。
平坦な安曇野の田んぼ地帯は爽快です。風に波打つ青い稲田はさらさらと、山から流れる川もまたさらさらと。私のペダルもこの辺りまでは、さらさらでした。
満願寺入口の標識を曲がると、始まりました、坂が。曲がりくねった標識が「ここからは楽ではないよ」と言っているかのようです。坂は急ですが、林が日をさえぎってくれるので、漕いで漕いでで登っていきます。ちょっとしんどくなってきた頃、道は清流と並行するようになり、坂も少し緩やかになってきました。
満願寺との分岐の先に、「微妙橋」という案内があり、興味を惹かれ寄り道をしてみました。
見事な太鼓橋(屋根付き)。寄り道をして良かったのは、近くに湧き水があったことです。
だいたい1時間のサイクリングで満願寺に到着です。
満願寺は静かな時間が流れていました。つつじ公園という別名の通り、5,6月は満開のつつじで見物客で賑わうそうです。
この日は、広い境内で3、4人。本堂にも気持ち良い風が吹き、シャツが乾いていきます。中を歩くと渋い雰囲気の鐘がありまして、浄財して突かせていただきました。予想以上の鐘音が境内にくまなく鳴り響き、つつじの緑葉や樹々にまで響き渡りました。
そしてしばらくして、また、静寂の時間に戻っていくのです。
帰りの下り坂は順調そのもの。わかりやすい自転車の醍醐味の一つですね。スピードの出し過ぎは、所々の窪みとガードレールなどない崖、そして猫の飛び出しがあるので(真っ赤な看板あり)、避けた方が賢明です..。
ステーションに自転車を返し終え、一人飲むビールは喉に美味しく、このために漕いだ甲斐があるなあと腑に落ちた感がありました。
いい気持ちで中房渓谷をバスに揺られながら、いつかはここを自転車で、いや、やはりバスでいいかなあと逡巡しながらの帰り道でした。
(ヤマネ)