目まぐるしく変わる天候燕岳ビギナー春山登山教室

2021/5/2

思い起こせば昨年のGWは、新型ウィルス感染症に伴う緊急事態宣言が全国的に発出、長野県下の山小屋は軒並み休業を余儀なくされ、北アルプスに人影はありませんでした。
今年のGW、依然としてコロナ禍の中にありますが、感染症対策を万全に、宿泊の営業、ツアーを開始いたしました。北アルプスの峰々は、2年ぶりに、春の山に登山者の皆様をお迎えできました。

一方で、４月２９日から本格的に始まったGWですが、殊、北アルプスは、それまで晴天続きだったそれとは一変し、雨・強風・風雪・雷と日々目まぐるしく変わる空模様に、訪れる登山者の皆様は翻弄されています。

季節の変わり目であるGW期間中、北アルプス山中は、安定した晴天が続くと、日中は半袖でも登れてしまうほどの汗ばむ陽気になることもあれば、“寒の戻り”という言葉があるように一度天候が崩れると、真冬に逆戻り。一晩で数十センチもの積雪と思いきや、冷たいみぞれ交じりの雨で体温を奪われることもしばしばです。

４月２９日から５月２日にかけての燕山荘周辺の様子を、「燕岳ビギナー春山登山教室」の模様を通してダイジェストでお伝えします。

＜春山登山教室１回目（4/29～4/30）＞

第一ベンチ

第二ベンチ

第三ベンチ

富士見ベンチ

合戦小屋

４月２９日は本格的な雨の中でのツアー出発となり、合戦小屋～燕山荘の稜線より上部でみぞれから雪へと変わりました。教室に参加された方のほぼ全員が、合戦小屋までに着用していた衣類がびしょ濡れとなったため、着替えを余儀なくされました。ただこの日は、雨ということもあり、合戦小屋の土間には特別にストーブが焚かれていたおかげで、濡れて冷えきった体を温め、着替えることができ、とても助かりました。

結果的に、燕山荘まで無事に辿り着けることができましたが、幸いだったのは、合戦小屋まで全身濡れてはしまいましたが、道中風がほとんど無かったため、大きく体温を奪われずに済んだこと、加えて、営業中の合戦小屋の土間で、ストーブに当たりながら着替えができたことも重要でした。

年末年始の登頂ツアーで、同じような気象条件（登山口周辺が雨で、稜線付近がみぞれもしくは雪）でしたら、上山は断念していたかもしれません。低体温症のリスクが非常に高くなるからです。

翌４月３０日は、西風が非常に強かったものの、気持ちよい晴天となり、朝食を済ませてから燕岳山頂の往復と、前日雨でできなかった雪上講習を短い時間ではありましたがテント場裏で行いました。

＜春山登山教室２回目（5/1～5/2）＞

５月１日は猛烈な風により、合戦小屋から上部は、絶えず耐風姿勢を余儀なくされるほどでした。瞬間的には３０～４０m/s吹いていたものと思われます。正直、あまりにもの風にカメラを取り出す余裕がほとんどなく、この日の画像はほとんどありません。

この日の救いは、吹く風が南寄りの暖かいものであったこと、また、ここまで登って来る間、あまり衣類が濡れなかったこともあり、思いのほか体温が奪われず、体力の消耗を抑えることができたことです。

ただ、合戦小屋から燕山荘までかかった時間は約２時間、その間の緊張感は、参加者の方々にとっては相当のものがあったと察します。

５月２日は、未明からの冬型の気圧配置の影響で、数十センチの新雪と寒気に見舞われ、燕岳の登頂は断念。その後も風雪は強く、厳冬期並みの装備を纏っての下山となりました。

合戦小屋

富士見ベンチ

第三ベンチ

第二ベンチ

第一ベンチ

寒気の影響で、第二ベンチ～第一ベンチ辺りまで雪化粧しました。燕岳登山口に着く頃は、雨へと変わっていました。

このように、５月でも北アルプスの稜線の天候は目まぐるしく変わります。季節の変わり目である４月から５月、加えて９月から１０月の標高3,000m級の稜線は、天候の急変は珍しいことではありません。

登山を予定されている日の気象予報は必ずご確認頂き（ヤマテン等）、それに合わせた衣類等装備の用意をお願い致します。道中、ご自身の登山の技量と照らし合わせ、不安を感じる天候でしたら、無理せず引き返す事も考えられて行動されることを望みます。風の強さなどは、画像からは伝わりにくいですが、耐風姿勢を取っていても、ふと飛ばされることがあり、注意が必要です。

また、安全登山の為にも、当面、積雪期に見合う靴とピッケル・アイゼン（前歯のついた１０本歯以上のもの）の携行を強くお勧めいたします。夏靴やスニーカーだけでの入山は、滑落等のリスクが非常に高くなります。

新型ウィルス感染症対策にご協力をいただき（燕山荘グループのCOVID-19対策）、事故のない、楽しい登山が送れますことを願っております。